MUKU-DATA  新発田屋木材倉庫

だいぶ前、と言ってもこの業界へ入って間もなくなので20年、25年前から
顔は知ってるし、何かの機会で雑談程度はした事はあったが
仕事としての接点がなかった設計事務所さんが昨日木材倉庫へ材を探しに
来ていただいた。
作る側の工務店さんも一緒に来られ、
選定した材が取付けの際に問題ないかどうかと見てもらう事も兼ねているらしい。
工務店さんも昔からその設計事務所の仕事をしている事は知っていたので
阿吽の呼吸で良いチームワークを感じた。

開口一番、これ花梨だよね、良いねぇ~ 
特にこの部分良いよねぇ~ って
ダメージが同居した傷んだ部分を撫でながら話していた。
もちろん、私自身も同じ気持ちで
その傷んでいる部分がこの花梨の特徴で、この一枚全体をつくる大切な個性だと思っていたので、凄く嬉しいのは嬉しいんだけど
心ん中の本質を見透かされているようで、何だか恥ずかしくて素直に喜べなかった。。。
(特に構えていたわけではないけど、ゴングと同時に即、ボディーにカウンターパンチをくらったような感じかなぁ・・)
ストレートな感覚、気持ちは、スーッと心の奥に入ってくる。

建築の事、庭の事、作る際の職人さんたちに対しての想い、木の事などなど
ずっと話していて、肝心な木材を見ていただくのは10分程度の時間しかなく
また、再度、材木を見に来る事になった。

殆どの話がリラックスして素直に頷ける事ばかりで良い時間でした。





磨きのない素地の良母(リョウボ)の曲がりあるものが良いとの事






舟の櫂(カイ)、
古材の櫂を棚に置いているのだけど、これに反応いただいたのは
木材倉庫をオープンして初めてのような気がする。
ある部材に使えるのでは?と見立てていた。




舟繋がりで、舵の古材も見て貰った。
袖壁の見切り材に使うといいと師匠から聞いていた事をお話した。



枌板(ヘギイタ)の話からネズコ(黒部)の天井


天井繋がりで、神代杉(鳥海山)柾目 天井板
これはなかなか出てこないものかと思う。
3坪だけ出ていたので、買っておいたもの。
ここぞという場所に是非使っていただき、長く後世へと残していって欲しい。








名栗の柱や棒、
この細い栗材、どこかに使いたいなぁ・・・
取って付けたようではなく、何気なくサラリと・・・
個性のある材でそれを使う事で室内が良くなるのではあれば・・
常に設計変更をしているらしい。
この事は常々私自身も感じている事ではあるが、
自然素材を取り入れる際(木でも石でも)
固まりかけている図面に柔軟さを残しておかないと上手くいかない事が多い。
その図面に書かれてある、そのサイズと材種を絶対に探す。。。となると
どういう事が起きるかというと
使うサイズより大きな材木を手当てして、そこから必要サイズを切り出していく作業になってしまう。
結果、自然素材感は損なわれ、尚且つコストも高くついてしまう。
自然木、自然な形の木や石を上手く使っている設計士さんは
皆さん図面に余白、変更できる柔軟さを残している。

かりに絶対にその寸法で指定材種で図面通りには出来上がっても
その室内が住む人にとって果たして本当に居心地いい空間かどうか・・・?

人が暮らす家を人が相談しながら作っている事なので
家の心地良さは作る過程での人対人対人の関係で結果に大きく作用する。
人に対する柔軟さ、自然素材に対しての柔軟さ、
そういった事がトータルで上手く進むことで、
そこで住む人にとっての最高な心地いい室内が出来上がっていくのかと思う。
達成する為に努力を惜しんではいけないと思う。





これが開口一番、ボディーを食らった花梨
一部ダメージがありスカスカになっている。
全部がキレイだったらそれはそれでいいのかもしれないが
一部の傷んだ部分がある事がこの花梨の板全体を見た時の
個性となっているのかと思う。
ここいいねぇって声を出して言われたのは初めてのような気がして
嬉しかった。
もう一つ、この花梨の特徴を付け加えるとすると
右上の穴、これは花梨やチークに見られる穴なのだが
山から木を伐り里へ降ろす際に、これらの丸太を像に引っ張ってもらい
搬出したと聞いたことがある。
何だかそんな話を聞くとその過酷な作業風景がこの一枚から思い起こされ
花梨やチーク材にあるこの像で引っ張る為の穴が貴重なものに思えてくる。



全ての欠点を取り除き、木取りされた材木も必要な箇所は沢山ある。
格式ある室内に、例えば抜け節が1つあったとしたら  
それを見た時に???何故と頭を悩ませてしまう。。。
適材適所、部屋にはそれぞれに格があり作る際にある程度のルールしきたりもある。(真・行・草)
自然素材、個性ある材は草、かと思うし
今の住宅は行・草が多いのではなかろうか。。
草の中での草の真、草の行、草の草があると思うが
やはり「草」の材は面白いものが多い。

曲りのある材、細い材、一部朽ちかけた材、
材木をそこへおいた際の、空間との関係性
そういった事を凄く考えている人たちだったし、
もう生まれ持っての天性のような気もした。

木材を一本立てた時の見え方、空間との関係、
室内から庇を過ぎて屋外へ
屋外との関係、庭、そこに植えられた樹木、置かれた石
建築は奥が深いなぁ・・とため息が出てくるし、
まぁそこで使われる一本、一枚に対しても
木材自体の個体そのものは当然ながら、それを置いた際の空間との関係を
掘り下げないといけないなぁ・・と感じた。
それは何気なく毎日やっている事ではあるんだけど(材木屋としての癖)
より具体的に意識してやることでその材木の個体と空間の関係を
もっと良く見せる事ができるのかと思う。
(何を言っているか良く分からない内容になっているのかと思うけど
ここに書きながら思考をまとめているのでお許しを
3坪の中での見え方、10坪中での見え方、窓の位置、その先の屋外との関係性
そういったより具体的な想定をして、そこへ木を置いてみる事
空間トレーニング的な事)