MUKU-DATA  欅輪切り 

数日前に、近所の方が(といっても初めてお目にかかるのだが、)乗用車に積み込んだ家財類の中で、「この木、使える?、捨てようと思うんだけど貰ってくれない?」
って突然訪ねてきた。
その方の近所の板金屋さんに話したら「新発田屋、こういうの好きだから持ってけば?」となったらしい。。
(まぁ、嫌いではない。どちらかと言えば好きかもしれない)

話を聞いているとその方のお父様が持っていたものらしく、(もう亡くなっている)
この度ご本人が関東へ転勤が決まりそれを機会に家財道具を整理処分しているとの事
きっとお父様が大切にされてきた欅だったので、今まで処分しきれずに、
なんとなく物置に置いていたものなのかもしれない。。

このようなケースはきっと多々あるのだろう。。
新潟県は昭和の後半、特に和風住宅で床柱や天井板が多く出たと新木場界隈の銘木店さんは口にする。
競って床柱をはじめとした和室の装飾材を求めた地域なのだろう。
そうした昭和の家も解体が進み、どれだけの銘木類が廃棄処分されていったことか・・・
木は育つのに長い年月が必要で銘木類となれば何百年単位となってくる。
年々市場には良い木がないね、出ないねと頻繁に銘木店から聞こえてくるし、
今より5年前、5年前より10年前の方が確実に良材があったのは自身も実感する。
昭和の家を解体する際は、是非、床柱、床の間廻り、玄関廻りなどに使われている材が何か?調べてから貴重な材はレスキューしたいところではある。

話はこの欅に戻るが、
「悪い気しないでくださいね、欅の木自体は、樹齢もなく目粗で、
白太部分は虫にもやられ、木単体の価値は低いですが、
形が面白いですよね! 出たり入ったりしていた幹を輪切りして、、
もしかしたら切り株が残っている部分からお父様が切ったのかもしれませんよね、、
昔ってこういった木を衝立にしたり、テーブルにしたり、
自分で磨いて木を愛でて大切にしてきたんですよね、、、
何よりお父様が大切にしてきた欅の木・・・
形も面白いし、雰囲気あるし、
こっちで磨いてキレイにしてあげるので使ってみては如何ですか?
素敵な脚を取付けて、サイドテーブルなんかにして、
新たな関東での生活で、このテーブルでコーヒーを飲んだりしながら・・」

出てくる出てくる、、我ながら、、
きっとそれが一番いいって思うから言葉が止まらない。。。

何だか言いくるめたみたいな感じになったのかもしれないけど、
きっとこの方、本当は木が好きなんだろうなぁ・・って、今はそれに気づいていないだけで
これから新たな地で、磨かれたこの欅を見るたびに、良かったと思うに違いない・・って
決めつけ?かもしれないけど・・
そう感じたのです。