■ MUKU-DATA  床柱(黒檀)と幕板(ちょいスポルテッド楓)

黒檀のこの寂びれた丸太自体がかなり傾いた材料・・かと思うけど
これを床柱として受け入れてくれる設計士さんと施主さんも
きっと同じような感覚を共有できている事が嬉しくなってくる。
材を扱うプロとして、一番はお客様が求めている室内に
最も適しているであろうと思われる材を数点、提案できる事だと思っている。
自分の好きや好みは3の次、
まずは、どういった空間と雰囲気を作りたいと考えているのか
図面、色、全体と和室の関係、その室内にどういった気配を求めているか・・?
それが分からないと材木の提案のしようがない。

設計者の金子勉さんとは何度か木を使う建築の際に
材木のやりとりを行させていただいている。
材木屋の視点とは当然違った、建築から見た材木の使い方の建築家としての
独特の視点があり都度、そんな使い方すんの?とか驚きがあり
それが経験として自分自身上積みされていくのでありがたいと思っている。

先日も本物件とは別な丸太を使った足元の出っ張りについて
建築写真を見せられ質問された。
この丸太の足元、どう思う?と
丸太の根っ子付近のでっぱりのある部分、
そこを切り取った写真、カメラマンもそこがツボだと切り取ったんだろう。。
金子さんは材木屋が見た答えというより素直な感想が聞きたかったんだと思う。
「少しいやらしさみたいなものがありますよね」と話したら
それに対する明確な返事はなかったが、目がニヤニヤしていた。

今回の材木の選定作業は、床の間
そしてそこに床柱を立て、落し掛けではなく幕板で床の間との境界を仕切る。
通常、、(通常、普通が何かはわからないけど)
まぁ・・何の前触れもなく、このザラザラした汚れた木の棒みたいなものを
倉庫の奥から引っぱり出してきたら、
もしかして、こいつ本気か?って怒られるかもしれない。。
金子さんと金子さんを信頼している施主さんから
何となく和室の話を聞いている中で、こいつ(黒檀の丸太)が降りてきた。
降りて来ても、相手によってはこれ、提案したら引かれてしまうかなぁ・・
こっちの方が無難で喜ばれるか?と思う事もあり、
この室内であればきっとAなんだけど全体を考えてB、C、と先ず提案させていただき
ついでにAって軽く話すと、Aには全く興味を示されずスルーされる事も多々ある(苦笑)

金子さんとの材料の選定作業はこの場合だったら
一押しは私ならこの「A」ってのを
私自身に出させて受け入れてくれるところが設計者としての器量なのかとも思う。
要は操られているのである。
材木のプロとしてあなたならどうする?と
そしてそこから建築家自身の展開が始まる。

これって多くの工務店、設計者と材木のやりとりをする中で
意外とありそうでなくて・・
皆さんある程度の材のイメージが固まっている事が多い。
(イメージが固まっているというのは=どこかで見たことがあるようなってのが
多いのも事実)

この汚い木の棒をですね、部分的に磨いてチラリと身を出して良く目を凝らせば
これ使われている材は実は黒檀でっせ!みたいな・・
(さきほどの丸太の足元を少しいやらしいと言ったが、
これも身の出し加減で厭らしくもなりそうなので要注意だと思っている。
所詮、見せ方を考える事は厭らしい行為なのかもしれない・・な
まぁ・・そこを気づかれないように地味に地味にって感じがいいのかどうか?)

そして受けの幕板はほぼ白で、一部分に軽くスポルテッド縞模様の入った耳付き板
これも例えば黒柿の墨流しでやったとすると、やり過ぎ感があって
黒柿の墨流し系でいくなら、じゃ床柱は何や?
図太い松のシャレでもぶち込んでおきますか?とノリが変わってくる。

材の組合せ、見せ方、見え方は無限で、真剣に考えはじめたらキリがなく
落としどころがわからなく着地が延々とできなくなってくる。

まさに材木選びの醍醐味、
昔から普請道楽って言葉があるように本来、材木ってそれだけ奥が深く
エキサイティングで答えの見つからない楽しい事なんだとも言える。

是非、木材倉庫へお越しいただき、あれこれと悩んでいただければと。。
頭を抱えた人たちばかりになったら
それはそれで絵的に面白いなぁ・・ 夢か。。





金子勉建築設計事務所 様:無垢材の選び方と効果的な使い方