■ MUKU-DATA 栃
お客様とのやりとりの履歴を振り返ると
まだ雪のある2月頃から始まった。趣味の時計を収納する腕時計ケースの話
はじめは、木箱のようなイメージで
わざわざ良材から木取りして作るのではなく個性的な木の端材を活用して
作れないか?からはじまり
ちょうど鉄刀木(タガヤサン)の床柱の切れ端があって
そのタガヤの切れ端は枝分かれの部分にクロッチ杢が出ていて
タガヤサンとしてはそういった材はあまり目にせず面白かったので
(鉄刀木の床柱としては天井に隠れる部分できっと押さえる為に長さだけ
確保されていた部分なんだと思う)
それを使って箱を作りましょう!って事になっていたのだが
いざ木工所へその切れ端を持ち込むと、、
クロッチ杢のある中の部分が傷んでいてそこにモルタルが詰め込まれていたので
また素材探しから・・・ の状態で止まっていた。
代替の材としては昔はローズ紫檀なんて言われていた
インドローズの床柱の切れ端もあったんだけど、、
まぁ、ローズの時計ケースって検索した事はないがそうそうないだろうし
ローズの木箱の中にコレクションした腕時計が入っているのも
悪くはないよねぇ・・それなりの良い時計ケースになるだろうなぁとは
思いつつ、今一つ、何かが足りないなぁ・・と思いつつ時間が経った。
で、昨日お客様が来られて、
鉄刀木が使えない事で素材選びからの振り出しに戻った事が功を奏して?
もっと自然素材感の残ったままのものに精巧な時計を収納したいという考えに
変わって深化していた。
柔軟だなぁと思うし、自分自身、腕時計を集めていないので
そういった発想は浮かんでこなかったので腕時計と天然木も悪くないなぁと。。。
自然のままの姿の残る厚めの材を何点か見ていただいた。
その手の材に関しては「猫屋」的新発田屋なので
どっちかといえば、変な材、銘木とは言えない迷木は
まぁ持っている方なのではなかろうか・・?と思う。
勿体ない・・ まだ何かに使えるのではなかろうか?的な精神で
何でもかんでもそのままの形で取ってある材が
弊社木材倉庫には比較的多いような気がするけど・・どうだろう?
穴の開いた板、割れた板、・・これはレジン用の小さめのテーブルにいいのでは
なかろうか・・とそのままの形で保管していたもので
それは樹齢のいった個性的な栃の板だった。
最近、レジンが現れた事でこれだったらきっとウッドレジンにいいかもと
穴や割れもそうそう気にならなくなって一枚板屋の救世主みたいな感じで
レジンに頼っている部分もあるのは事実だけど
この栃、レジンもいいけど何だか色んな杢目が詰まっていて
なかなか個性的な一枚で、
まさにお客さんが求めている最適な部位が一部に存在している板なので
迷いなく時計箱の材として木取りする事にすんなりと決まった。
場の呼吸が合うというか、お客さんも良いって思ったし、私も良いと思うし
何よりこの栃自体がそう使って欲しいと木の方からそれを求めているような間
木との対話の中で時々、降りてきた!っていう瞬間があるんだけど、それがきた。。
木が好きで木の事を良く知っているお客さんなので
キャラの詰ったこの栃の、どこの部分を使って何となくイメージしている事を
形にしようか?っていう見立て木取りも同意見だったのは何だか嬉しく思う。
そのまま車に積んで、木工所さんへ走り
三人で打合せ
どこにもない一点物の時計ケース、とても良くなりそうな予感
先ず素材ありきから、そこのどの部位を木取り何を作るか?って
やっぱり多くの事に興味を持って体験していないと
なかなかその発想は生まれてこない事だなぁ・・って思った。
時々、今回のケースのように自然素材を活かしてどこにもないものを・・
ってイメージを形にしていくものを頼まれる事があるのですが、
やった事がない事ばかりなので正直、凄く労力を使うし
出来上がったものが100点にならない事も多いのも事実。
こちら側にセンスとプロデュース力があれば、お願いされる前に
この木のこの部位は、これに。こっちの部位はこれがいいかなぁ・・と
相手がない状態で形にしていけるので労力は半減できる。
でも普段、時計集めをしている訳ではないから今回のような発想は浮かんでこない。。
じゃあ、どなたかプロダクトデザイナーさんと共同で色々やってみては?って
事も選択肢にはあるんだけど、
木が好きでないと、木の美味しいところがお互いにズレてきて
デザイン的には良いんだけど、それ、別にこの木じゃなくても良かったんじゃない?
みたいになりそうで・・いまいち気がのらないん気持ちもありーので。。
やっぱり毎日木に触れているオレらの目で
形にしていける事が、木の美味しい部分を活かしてあげれるんじゃないかなぁと
思ったり。。
人生も後半戦に入ったが、やっぱり本気で楽しい事、ワクワクする事
もっと真剣に遊ばなきゃ!って勝手に都合よく解釈してる。
別件で、こちらも半年ほどあれこれとやっている物を置く為の台なんだけど
漸く材はグラナディロ(アフリカンブラックウッド)に決まって
木取りを終えたが、一難去ってまた一難
こんなの簡単に作れるだろう?と思いそうだけど
先ずここまでくるのに素材選定
注文は1点だけど
出来上がってみないと分からないであろうから念の為に2つ製作している。
ここまでは良い感じになってると思うので
喜んでいただけると良いんだけど・・・