
■ MUKU-DATA 台湾樟 1900×1100mm SOLDOUT S様
昨日少し木材倉庫を見せて欲しいとお客様が来られた。
何事も深く掘り下げる方なので
私の話が邪魔になると思い、どうぞご自由にと別な作業を行っていた。
しばらく倉庫の一枚板など見ておられてから
あの木ってまだありますか?と聞いてきた。
あの木・・?、あの木・・、
あぁ!あの木ですね!
そのあの木がこの写真の台湾樟の事だった。
写真は杢を見る為に表面を濡れタオルで拭いているのだが
長い月日の保管の間に材面は埃を被りグレーに変色している。
この台湾樟が弊社に来てからもう15年は過ぎたかと思うけど
銘木店の展示会で販売されていたもので、
きっと昭和の頃のものかと思われる。
片側の耳のある部分には墨壺で糸を引き墨が打ってあるので
耳部分を落す事を検討していたのだろう。。
この厚み(薄め)と巾から見て、きっと床の間の板に木取りしようと
墨を打ったのか思う。
実家の踏込み床の地板は台湾樟が使われあり
長い間の母の雑巾掛けでの手入れで色も深みを増していい味を出している。
台湾樟というと色は国産の樟よりも当初は白く
香りも国産とは違う。
きっと昭和の頃に台湾桧と共にこの台湾樟も輸入されていたのだろう。
この板、凄く雰囲気のある板で
当初は本社事務所脇の部屋に暫くの間、立て掛けて置いていた。
乾燥過程で杢目に沿って収縮した部分もあり材面は凸凹している。
これが光の加減でその凹凸に影が出来て
その立ち姿は、まだ樹皮を纏った森の中の立木のように見えていた。
事務所脇から木材倉庫へ移動して
そこへ数年前にSさんが来られた際に、どこかに引っかかったようだった。
今度建物を建てる際に、扉として使いたい・・
というようなお話だったかと思うが
その後、このグレーに変色した台湾樟には他のお客様からは
声がかからずに、昨日まできた。
あれから数年経過しても尚、Sさんの心にまだ引っかかっているんだなぁ・・
って。
倉庫の奥から引っぱり出して、
今回はテーブルとしての使い道を検討されているようで
脚の上に載せてテーブルとして見立ててみた。
いい!凄くいいんだ、
写真でもこの木が持つ何か特別な雰囲気のあるオーラはなかなか伝わらないのだけど・・
乾燥過程で縮んでしまった部分もあり材面は凸凹しているのだけど
テーブルとしても使えそうだ。
キレイに材面を削って仕上げる事もできるし
削れば少しレモン色の白木に多彩な杢目が出てくる事も分かるが
このままの雰囲気の方を優先して、削らずにこのままで使うらしい。
比較的薄めなので(確か40mm程度)
時にテーブル、時に衝立、壁に立て掛けても絵になりそうで
状況に応じて色々な用途に使えそうだと思う。
きっとSさんが迎えに来る事を待っていたんだなぁ・・と思う。
(先日の生死の間を彷徨っていた時に何を考えていたかと聞かれ
きっとお前が迎えに来てくれると信じていたという言葉と被る)
ものを大切にするSさんの元へ行く事は木にとっても嬉しいこと。
今度はSさんの元で皆さんに大切にされながら
伐採されて半世紀、まだ使われた事がなかったこの木は
いよいよ、Sさんたちに使われながら、本来のこの木が持っている良さを
存分に出していくのかと思う。
次へ繋げる事ができて良かったと思う。





