MUKU-DATA  一位(イチイ)

材木屋になりたての若い頃、まだ二間続きの和室も多く
床柱として一位(イチイ)の木を多く使っていただいた。
当時は一位より少し金額が安いものとして槐(エンジュ)を選ぶこともあった。
いづれも耳白の白太の面が残っている仕上げが多かったが
一位の赤身のみのピン角も個人的には好きな床柱だった。

一位の床柱を納めたお宅へ10年ほど経ちお邪魔する機会があった時に
真新しい一位はオレンジ系の色合いなのだが
経年変化で深みのあるまろやかな色合いへ変化していて、
あぁ・・この木の良さは10年後、20年後と変化した時に本領発揮するんだなぁ・・と思った。

一位と言えば床柱、落し掛けが殆どで(時々小さめの板材などを見かけていたが)
和室造作の際の材の取合せには相性の良い材だとは思っていたが
なかなかそれ以外での部材が出てくることもなかった。
先日、市場で一位の短材、端材、挽き板などが出ていたので
少しだけ入手した。
ボロボロな部材もあったが、目は細かく樹齢はかなりいっている。
この部材を見た時に以前お茶の席での結界に一位が使われていたことを思い出した。
枯れた材の欠けた部分を活かしながら作られた渋い結界となっていた。

本格的な和室は少なくなったものの
例えば四畳半のリビングに面した和室等があったとしたら
是非、和アイテムとして使っていただきたい材種の一つでもある。

和室いえば杉、桧などが多いのだろうが
杉の造作材を基本とするならば、例えば棚板に一位を使って見たり、
建具のどこかに組み込んでみたり、
板床(いたどこ)などあればそこで使って見たり・・
ちょっと違った材を組み合わせる事で更に上質な和空間に変わるかと思う。
一位以外でも例えば神代木、渋めの色の玉椿(浜栴檀)、朴ノ木なんかの色も
面白いかもしれない。
組合せの妙、是非、いろんな材種を使っていただきたいと願う。