MUKU-DATA 欅3000 670-750-1030 t35mm 吸付き桟3カ所
                      2022 10/29 SOLD OUT 新潟市S様

4~5年ほど前に盆栽を触っていた時(現在は休止中、盆栽屋に預けてある)
ぼうぼうになった杜松や楓が盆栽屋の手にかかると
ガラッと趣を変えて見違えるように変化して目の前に置かれて、、
やっぱりプロだよなぁ・・と自分にはできないと頷いていた。

一枚板を扱う我々にもそれを劇的に変化させて驚かせてみせる瞬間はある。
桟積みして天然乾燥させグレーに変色した埃まみれの捻じ曲がった板。
これを見ていただき、これ良い杢、出そうだねぇ・・ 全体のバランスが良いねぇ~
なんてピンとくるのはそれを毎日扱っている人以外、なかなか見極めは難しいかと思う。
ひと削りした瞬間、鮮やかな木肌が現れ、全て削り仕立て上げると
あの真っ黒の汚らしい板は見違えたようにそこに存在する。
この瞬間が一番劇的な変化かと思う。
そして次の驚きは何も塗られていない木地にオイル塗装等を施した瞬間。
木目は際立ち本来のその木が持っている本性が現れてくる。

もう一つ、大切な事が、例えば割れが大きな板や虫に食われた箇所などを
どう処理してどう見せるか?
ここがそれぞれのお店、それを仕立てる人の経験と技術、センスとなる。
枯れた枝を残すか切り落とすか?枯れた幹や枝をジン、シャリといって
景色として盆栽ではあえて残して愛でている。

一枚板も同じかと思う。
無傷無欠点というのは欠点部分を取り除き作り上げられる事が多い。
いわゆる銘木というものである。
ところが最近は本来の姿をそのまま残し活かして傷を良しとする人も多い。

知り合いの材木屋が仕立てた何てことはないただの欅
持っていてくれというのでこれを先日引き受けた。
良く見れば、なかなか良い顔をして蝶チギリの入り方もバランスが良いかと思う。
Y字に枝分かれしようとした枝は一旦繋がり、再度また大きく広がっていったのだろう。
木の枝分かれ部分にはサバ杢(クロッチ杢)と言われるギザギザ模様が現れる。
色の濃くなったクロッチ部分、
一旦分かれて開いた穴にはシャム柿で作られた細身の蝶チギリが埋め込んである。
元の方は木口割れがあり、そこにも同じ蝶チギリ。
白太の辺材部分には虫に食われたピンホールの痕が残るが、、そう気にはならず
これも絵になっているかのように見える。
厚みはt35mmと一枚板としては薄いが反り止めとして吸付き桟3カ所の処理もされてある。

鯖杢からの色の変化と木目の変化、蝶チギリの入り方のバランス、反り止め
決して銘木ではないこの欅が、何だかとても良いものに見えてくる。
一枚一枚、顔や特徴の違った一枚板・・
無言の対話を繰り返し、どう仕上げるのがその木にとって一番いいのか?
仕上げ方、見せ方が問われている。

この欅、
リビング置いてもいいと思うし、お店に置いてもいいし、
どこに置いても映えそうな一枚かと思って眺めていた。