MUKU-DATA 山桃(ヤマモモ)の一枚板

「元気のいい女の子みたいな板ありませんか?」と唐突にメールがきたら
木を扱う事を生業としているプロのあなたなら何を提案しますか・・・?

2年ほど前から木が縁でお付き合いさせていただいているタップダンサーの
おどるなつこさんからの唐突なリクエストから始まりました。

衝撃的なリクエスト・・
なにか試されているような・・
材種、サイズ、価格、硬さ、色合い、見た目・・・普段意識、整理して
引出しにしまっている事以外の、、、
元気のいい女の子みたいな板・・・ ・・ ・  。。。 ?
想定外で別次元
こんなリクエストするって感性の人だな・・って思う。

突如メールがきたのは4月、、それからが長かった?ですねぇ~
一番の要望は「元気のいい・・・」
そしてタップできる50cmほどの巾、価格、硬さなどが付いてきて
以前送った、樺はなんとなく男の子、樹齢のいった台湾楠はお婆様・・
(まぁなんとなく言わんとしている事は理解できた。硬さや踏んだ際の音の事をいっているんだと思う)
という付属要望があるのみ。。

現在木材倉庫にある板で、カットしていいものなど含めて
約2週間後に10枚程度写真を送りつつも
なんか違うんだよねぇ‥っていうのが本音。
ご要望メールをいただいて1週間、2週間、も何も連絡せずにいると
普通はヤル気ないって相手に思われたりするのでは?と思いますよね。。
(自身の場合ザラに数か月も返信せずにいる事もあるので
それはその期間適材を探しているのですが3か月後これかなぁ・・ってものを見つけ
メールしても返信も音沙汰もないっていう悲しい思いは
よくあることなのですが😓 そして未だお応えできずにいる方、スミマセン )

この件に関しては、スタッフや親しい同業者、SNSでも呟いてみたけど
元気のいい女の子っていうと桜が一番多かった。
変わったところではボコテもあったがリオのカーニバルを想像したのだろうか。。

ところで木のプロのあなたなら、何をご提案しますか?

ある程度、お客様のお人柄も知っていないとでしょうし、
元気のいい板の捉え方、女の子みたいな板の捉え方も人それぞれなのでしょうから
かなり幅が出てきますよね。。
もう一つは、プロの材木屋として何を選んでくるのだろうか?という意味合いも
あったのかもしれません。

一旦2週間後に10枚程度写真を送りつつ、もう少し探してみますねと返信して
また2か月以上が過ぎた6月末に、
まだアパとパープルハートありますか?とメールをいただく。
アパはあるけどパープルは売約済みを伝え、
どうも弊社にあるアパにフレッシュさが足りなく
自分自身も「元気のいい・・・」にそぐわないと感じたので
再度、もう一度探してみますね、、とアテもなけど返信をさせていただいた。

4月からのリクエストでいつもこのことは頭の片隅をあって
時々、新たな材を出した際は注意してみていたが、、
この花梨も違うし、この栃も、どうも違うし・・
探してみますね・・という返信ももう3度目だしなぁ・・
あぁ・・何かないかなぁ~ っていう気持ちでスッキリしない日々を過ごしていた。
(他にも数件、同じように頭の片隅にある未解決な材料の事などがあるのですが)

出来る事なら待たせている先方さんにも長く引っ張るのは悪いので
早く終わらせたいって思うのが普通ですよね。。
あぁ・・これも違う、あれもいまいちってモヤモヤした感じに終止符を打ちたいよね。。

でもこの「元気がいい女の子みたいな板ありませんか?」って
なんか個人的には凄いリクエストだと思っていたので、
自分だったら何探して、提案するか?って
自身への挑戦みたいな感じになっていたんですよね。。
ここで終わらせたら何もなかったことになるなぁ・・というか・・


そうこうしている間に日は過ぎて7月の半ばに名古屋へ材の事で行く機会があって
ついに、その時がきた訳です。

何?この色の変わった古い板?
色はグレーに変色しているし、ねじ曲がっていたけれど杢目があるのは
なんとなくわかったし、一部木肌が見え色合いもキレイそうな色だし、、
これ何の木?
「桃」らしいです。挽いた人が桃っていっていましたよ。。
モモ・・? モモってこんなに大きくなるの? モモねぇ・・桃・・
こうこれだ!ってピンときましたね。
ネジレているけど1mほどは木取り可、厚みもそこそこあるし
巾は50cm少し切れるけど、、
もうこれしかない!って感じで。。。
直ぐその場で電話して「見つかりましたよ!!」って言いたかったのですが
万が一木取りできずに駄目だったという事も考えられるので
そこは我慢して他の材と一緒にトラックにのせワクワクしながら持ち帰ってきた。
(タップボードを探しに行った訳ではないのだが、頭の片隅に留めていた事で
見逃さずにゲットできたって感じですかね・・)










持ち帰ってきた桃の板の木取りを行う。
傷みは大きかったのでタップボードを最優先に良いところ取りの木取りした。
何とか行けそうだね、これ。。 って感じで
過去にモモは扱った事がないので興味津々
杢の気配も感じられるので早く削り材面をみたい気持ちだった。





初めてみる桃の木(実は山桃なのですがこの時はまだ桃だと疑わなかった)
想像通りに杢もある。






木取りを終えた残った端材は自分自身で削ってみた。
この時香りは殆ど感じなかった。




逸る気持ちを抑えつつまた6月末からひと月も経過していたので、

「元気のいい女の子みたいな板」かどうかわかりませんが
桃の木って興味ありますか?とメールさせていただいた。
即効ご返事をいただき
なんと、その日はご本人の誕生日だという事
こりゃ、持ってるよね、、なつこさんもこの木も。。
そんなことってあるの?みたいな感じだった。



桃の木の事って全く知識なくてあれこれと調べていたら
「なつっこ」っていう品種もあるみたいで
おどるなつこさんやっぱり持ってるわぁ~ と思いつつ
梱包するまで、1週間ほど毎日この木を眺めていた。
杢目もあってキラキラしてて果樹だけど銘木級だなぁ・・と何枚も写真を撮った。
正直、手元に置いて置きたいって気持ちにもなっていたのだが・・
これは、そこへ行く為にこの木から現れてくれたのだから
行き先は初めから決まっていた、この木に出会う前から
実は決まっていた事だったと感じる。

そして梱包する直前に
木に詳しい方とのやりとりでこの木の事を話していたら
これが桃ではなくて、山桃だという事が判明した。。これまた衝撃の事実。。
新発田屋らしいというか、私自身らしいオチ付きとなってしまった😓

当然このことは先方へも正直にお伝えして謝ったが
山桃の実を食べた事があるらしく、このヤマモモで良いと承諾いただいた。

桃ちゃん🍑桃ちゃん🍑って何度も言っていたのに、、、
山桃ちゃんの木だったのです。
出荷前にちゃんとお伝えできて良かったし、桃と思いながら触られていたこの木も
ちゃんと山桃だと理解されて喜んでいるのかもしれない。

山桃ちゃん、ほんとゴメン。な気分。。




オイルを塗ったらどうなるんだろうか?と濡れタオルで拭いてみた。
はじめは薄めに色が付いて徐々に奥まで浸透して濃い色へ変化する。
無塗装の表情も良いが塗った感じもまた更に良い。
削った際には感じなかった匂いだが
拭いている際に少しだけこの山桃の香り?を感じる事ができた。
甘くはない酸っぱい?苦い?果実にあるそうな香り。。
なんと言葉で言っていいのか・・
嫌な香りではなく自然な香り。。

上の写真の山桃は粒々した杢目が散りばられた板
もう一枚は縮み杢と黒い筋模様が際立っている一枚で
どちらも魅力のある山桃の板だと眺めていた。
(眺め過ぎ、触り過ぎ、写真撮り過ぎ、っていうくらいに・・😓)


山桃ちゃん!
凄い杢と雰囲気でしょ!
あとはタップボードとして踏んだ時の音が「元気のいい女の子みたいな」を
出せるのかどうか・・
昨日梱包を終えて運送屋さんへお願いしてきたので今ごろは関東でトラックの中かなぁ・・

久々に長いブログになってしまった。
あまりに濃い出来事は過去にもブログに書ききれずにそのまま書かず仕舞いの事もあるが、
今回はかなり意識しながらこの材の事を探し出会いお届けできたので一連の事を
書くことができたのかと思う。

問合せをいただき、数日後に納品ってのが当たり前の時代
サイズ、色、材種、価格を踏まえた適材適所のプロ目線ってのが通常ではあるけど
「元気のいい女の子みたいな板ありませんか?」って
かなり多くの意味合いを含んでいる感性を含んだご要望ですよね。
探したってあるもんじゃない的な・・

だから思うんですよね・・
この一件に関しては、山桃から行きたがっていた。
お客さんの求める気持ちと山桃がそこへ行きたいって思う気持ちが
初めっからあったのではなかろうか・・・と。
一枚板を扱っていると時々このような事があります。
材の方が大切にしてくれるその人の元へ行きたがっていて
主張しだしこちらに気づかせてくれるような事。

材木屋はそんな橋渡し的役割なのかとも思うし、
毎日毎日、こういった劇的なまでの嫁ぎ先は見つからずにせよ
少しでもここで使われて良かった、この人の元へ行って喜んで貰って良かった、
材を送る上で大小限らずにそういったことの積み重ねが大切だと思うし
材を納める上でもこの上ない幸せなことなんだと思う。

そんな素敵な難し過ぎるリクエストをくれたおどるなつこさんと
目の前にふっと現れてくれた山桃ちゃんに
いい機会をいただきましてありがとうございます。 と感謝なのです。