■ MUKU-DATA 岩室の家 金子勉建築設計事務所
金子さん設計の岩室の家、完成してから早いものでもう15年が経過した。
いろいろな木材を大胆に使っていただき、
当時を思い出すと材木の手配もやりがいがあったし、
独立仕立ての技術のある大工さん(杉井建築)もやる気満々で、
金子さんを中心にそれぞれの職人さんたち皆さんがチーム一体となり
気合入れて工事した思い出深い現場だった。
坪庭の木製建具廻りの補修で、ここ数日お邪魔しているが
時と共に、益々深みを増してきているように思う。
床材は経年変化で色は濃くなり、桧、栗、各所の化粧の杉材も
全体に調和している。
木はやっぱり年月と共に味わい深く変化するものだなぁと実感できる。
若い頃は、国の文化財となっている茶室など
なんでこんなに全部グレーになって煤けているようなものがいいんだろう・・・
と思っていたが、毎日毎日、木を触り建築の事を思い、今となると
その本当の良さという事が少し分かるような気がします。
そういった文化財級に比べたら、まだまだ木の良さは漸く出始めた感じか・・
そこで暮らす人に触れられ毎日木の床の上を行き来して
一枚板の栓のテーブルで食事をする。
少しづつ凹んだ傷ができ、
ツルツルした木の表面が自然な形でエージングされていく。
生活の跡の小さな傷は、外からの光をやさしく受け止めて静かな光沢を放ち
室内全体に柔らかな光と独特な空気感を漂させている。
桧の床や階段は色が焼け濃くなり、
栗の床も同様にチークのような色に変わっている。
桧も栗も色合いは同じようになり、脚の裏から伝わる硬さの質感が少しだけ違う。
もう10年、その先の10年、漸く本当の木の良さが醸し出されてくるだろう。
「オレ、この家、凄く気に入っててさぁ」と家の主が言っていた。
そうですよね!いいですよね!
大切に使われていてそこで暮らす人仕様に家も深化していると思った。