MUKU-DATA  数寄です! 漫画:山下和美  監修:蔵田徹也(=田野倉建築事務所

勝っても負けてもオリンピック選手の試合後のインタビューでの言葉に感動します。
深夜の卓球女子団体、福原愛選手から絞り出された「苦しいオリンピックでした・・」
その本音の言葉が深く心に刻まれます。
責任、重圧、プレッシャー、想像できない極限状態にあるのでしょうね。

お盆前にお客様から山下和美さんの漫画「数寄です!」をいただきました。
住まいづくりの参考にされたとの事です。

内容は数寄屋建築家との出会いから、もともと心にあった「和」に目覚め、
実際に一戸建ての数寄屋建築を建てるお話し。
また「続 数寄です!」は引っ越してからの維持管理、日々の暮らしの中での
数寄、の気づきなどが描かれています。
一話終わるごとに、建築家:蔵田徹也氏の「数寄屋ぶくろ」というコラムで
専門解説が入り、知識も深まる内容でした。

マンション暮らしから実際に引っ越してからの和室の隙間風、
谷崎潤一郎の陰翳礼賛での風流とは寒きものなり(斎藤緑雨)
11月、部屋の奥まで差し込む淡い光に映し出されるモミジの影
障子越の光と影
夜中に蝋燭の灯りで映し出される唐紙の雲母の妖艶美
など

陰翳礼賛を改めて読み直してみました。
羊羹の話、肌の色、漆器、床の間、細かな分析と描写に頷かされます。

陰翳礼賛 谷崎潤一郎  
一部抜粋
・・・・・
私は、数寄を凝らした日本座敷の床の間を見る毎に、
いかに日本人が陰翳の秘密を理解し、光と蔭との使い分けに巧妙であるかに感嘆する。
なぜなら、そこにはこれと云う特別なしつらえがあるのではない。
要するにただ清楚な木材と清楚な壁とを以て1つの凹んだ空間を仕切り、
そこへ引き入れられた光線が凹みの此処彼処へ朦朧たる隈を生むようにする。
にも拘らず、われらは落掛けのうしろや、花活の周囲や、違い棚の下などをうめている闇を眺めて、
それが何でもない蔭であることを知りながらも、
そこの空気だけがシーンと染み切っているような、
永却不変の閑寂がその暗がりを領しているような感銘を受ける。
思うに西洋人の云う「東洋の神秘」とは、かくの如き暗がりが持つ静けさを指すのであろう。
われわれといえども少年の頃、日の目の届かぬ茶の間や書院の床の間の奥を視つめると、
云い知れぬ怖れと寒けを覚えたものである。
しかもその神秘の鍵は何処にあるのか。
種明かしをすれば、畢竟それは陰翳の魔法であって、もし隅々に作られている蔭を追い除けてしまったら、
怱焉としてその床の間はただの空白に帰するのである。
われらの祖先の天才は、虚無の空間を任意に遮蔽して自ずから生じる陰翳の世界に、
いかなる壁画や装飾にも優る幽玄味を持たせたのである。
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