MUKU-DATA  神代杉一枚板 3m  大阪府 K 様

約半年前に納品させていただいたその後の神代杉の写真と共に
少し反りが出てきたので、どうしたらいいですか?と相談のメールをいただく。
7月の納品だったので、この木にとっては仕上げてから初めての冬を迎えている。
心当たる何点かをメールしてどのように反っているか詳細写真をいただくことに。
この木をとても大切にされていたのでもしかして材面の表面に
透明なビニールのテーブルクロスを敷いていませんか?
過去にオイル塗装の一枚板の表面にテーブルクロスを敷いている事で
表面が、かまぼこ型に反りが出た事が2回あった。
一枚はブビンガ、もう一枚はパープルハートだった。
いづれもビニールクロスを取る事である程度反りは解消されて
再加工までする必要はなかった事を思い出した。
ウレタン塗装などでコーティングされた一枚板は湿度など室内環境の変化を受けにくいが、
無塗装、オイル塗装などの場合、木は常に湿気を出し入れして調湿を行っていて
室内環境の影響を受けている。
木材倉庫に作業していると、その室内に置かれている一枚板や厚みのある木の床、
天井は桐の三層、壁には焼杉や挽き板張り、そして漆喰
天然素材を多く使っているので夏場は湿気を吸ってくれてヒヤリとしているし
逆に冬場はエアコン暖房を使っていてもある程度の湿度が保たれている事が
体感できる。

先の2枚の場合は表にテーブルクロスを敷いていた為に
木裏側(テーブルの裏面)のみが乾燥した状態になって裏面中心に縮み
かまぼこ型に反りが生じたかと思われる。

ところが、送られてきた写真を見ると
同様にテーブルクロスをしていたらしいが、反りはかまぼこ型ではなく
一般的に反りが出る、木表側にU型に反っていた。。
ハテナ???
一枚板は殆どは木表側にU形に反るのだが(木表面から水分が抜ける)
中にはかまぼこ型に逆反りする板も稀にある。経験上は全体の3%もない程度
杢目が複雑なクラロだったり、アテ(癖)の強い一枚板などに
そういった逆反りが出る事はあるのだが・・
この神代杉、ある程度の樹齢はあるし、多少杢目も複雑ではあるのだけど
数年間、木材倉庫で観察していたが逆反りみたいな変な動きをする木ではないんだけどなぁ・・と思いつつ・・
お客さんと写真を見ながらあれこれと話していたら
もしかして加湿器では?なかろうかと思われてきた。

湿度が下がり過ぎるのは木には良くないのだけど(人にも良くない)
室内が乾き過ぎているなぁと感じる時や肌がカサカサしてると感じる時に
人がスキンケアクリームやリップクリームを塗るように
木にも同じようにオイル塗装品であればオイルを塗ってあげなければいけない。
(木はまだ生きている)
材種によっては人肌よりも木の方が繊細で敏感なものも多い。
なので適度な湿度を保つ為に加湿器自体は木にも人にも良いのかと思う。

では何故に、今回ビニールクロスを敷いた一枚板が
エアコン+加湿器でU形に反ったのか・・(過去2枚はかまぼこ型だったのに)
ここからは
推測
・いただいた写真を見ると、内装で調湿効果のある建材類が少なく
 唯一、オイル塗装の神代杉のみが湿度を調整できる自然素材であること
・表面にはビニールクロス、裏面へ集中的に加湿器から湿気を呼んだ。
・話している中でエアコンをつけていない時に加湿器だけ入れ
 床面が湿気で塗れていた事があった。
 (木にとってはそれ位の保湿はとてもいいのだが)
・結果、表面はビニールクロスがあるので湿気は吸わず、裏面のみ集中的に
 室内の湿気を呼んで裏面の木が膨らんだ事でU型に反った可能性大


対策
・一枚板は鉄脚に固定していないので上下反対にして木裏を上へ向ける
・同じように木裏面にテーブルクロスを敷き、今までと同じように
 加湿器も使う。
・表裏を反対にして同じような環境で使用すれば
 ある程度反りは直るのではなかろうかと思う。

今後
・反りが直ったら表面、裏面共に満遍なくオイル塗装を行い
 エアコンや加湿器はそのまま使用してもいいが
 ビニールテーブルクロスは常には使用しない。
 例えばテーブルが汚れやすい鍋や焼き肉などやる時に限りテーブルクロスを
 使うなど限定的として常時敷いておかない。

ウレタン塗装でコーティングすれば、輪染みなどの問題は解消され
テーブルクロス等も必要なくなるのだが
木の質感は半減してしまう事になる。
どちらを優先させるかは悩ましいところかと思う。

個人的には無塗装、オイル塗装で汚れても自分は平気なんだけど。。
傷や汚れがそこで使われた証
木はその環境でその場だけのものとして育っていくとも言える。
本当に汚くてどうしようも無くなったら一旦削り加工すれば
新品にする事だってできる。

過去にこのようなパターンはなかったので
今回のケースはとてもいい勉強になった。
一昨日の話なので、まだ直ったどうかはわからないが
約1か月ほど様子を見てくださいとお話しておいた。

今回のこの反りの推論、一枚板を多く扱うプロの方は
どう思われますか?
きっと平らに戻るような気がするんだけどなぁ。。。



それはそうと、神代杉を迎え入れていただき間もない頃の
素敵な写真も一緒に送られてきたのでご覧いただければと思う。
木材倉庫で6年程度保管されていた材、
大阪という新たな環境で大切に使われ始めています。
確か、ご主人さんは山形にルーツがあると言っていたかと思う。
きっと鳥海山で育った木が呼んだのかと思う。