MUKU-DATA  栃 製材直後に裂ける

先日、持込みされた賃挽きの栃を見ていたら
木口の割れのある赤身部分を製材した直後に板がパーンと裂けた。
あぁぁぁ・・ 裂けたぁ・・・  
栃も裂けるんだぁ・・と 昔挽いた赤い木を思い出した。

もう20年ほど前に「リュウガン」(と大工さんは言っていた)という赤い木を
何回か製材したことがあったが、
帯鋸を通過した後からどれもことごとくバキバキと裂けていった。
リュウガンが竜眼木なのか?(竜眼とチンチャンは同じ?別な木?)
雷電木(ライデンボク)と言われるチンチャンなのか・・その後製材する機会がないのであの赤い木の正式名称が何だったのかは定かではないが
持込みした大工さんはリュウガンと言っていた。

あの頃、リュウガンを製材するのを見ながら
うわぁぁ・・ 裂けていくんだねぇ・・丸太で樹皮に覆われている事で
形をキープして色んな方向に力が向き押し合いながら引っ張りながら
バランスを保っているんだなぁ・・と妙に関してしていた。

板挽きして桟入れして天然乾燥する際は、樹皮(耳)の部分は落とした方がいいと言われている。
板は樹皮に両端から引っ張られて割れやすいらしいが、、
確かにそうかと思う。
昔の枠材は片耳は製材して落として乾燥させていた。
片耳だけでも落しておけば両端からの引っ張りがなくなるので割れも軽減されるのだろう。

栃の丸太製材は頻繁には立ち会う事はないが、
栃もこんな感じで割れるんだなぁってことを体験した。

この栃が持っていた自然の力で割れた曲線は、それはそれで良い感じに思えた。
こんな風に曲線加工はなかなか狙ってはできないよね。。

美しい裂け方、割れ方・・・
そんな事を思っていたその日の夜、SNSを眺めていたら
工業デザイナー秋岡芳夫さん(1920-1997)の言葉のbotが流れてきた。

「木の力を殺さずに、活かして使うために割る」それがかつての日本の木工技術だった。「木を割って物を創ると言うことは、とりもなおさず、木にならって、自然に素直に物を創ることだ、いや木がそうさせるのだ」と、われわれの祖先たちは考えていたのではないだろうか。

木にならって、、、自然に素直に創る。。
いや木がそうさせるのだ。。

木を良く知って向き合っていた方なんだなぁ・・と
とても同感する。