MUKU-DATA  玄関式台・廊下板:神代欅(茶神代)
玄関框:鉄刀木(タガヤサン) 新潟市 M 様
以前から弊社へ栗の丸太や杉の賃挽きなど時々頼みに来られる方が
久々に顔を見せ、うちにある欅の厚盤を引き取ってくれないかと来られた。
御年80歳だと言われていたが木が好きな方なんだなぁ・・と思っていた。
昔は家を建てる前に材を自ら集め、この欅は差し鴨居用、これは玄関式台用、
床柱は一位がいいか?丸太にするか?・・
と少しづつ集めてから、大工さんにお願いして家を建てるという人が時々居た。
Mさんもそんな感じの一人で、少し前までは裏の空き地に作業小屋を建て、
みんなが集えるような場所をと少しづつ作っていたようだったが、途中病気を患い入院されていたとの事。
先代との縁もあり、それで欅の厚盤を引き取って欲しいとなったようです。
で、現物を見に行った際に、お茶でも・・と言われはじめて本宅にお邪魔したが、
それがまぁ個性的な材を使った内装造作に関心した。
特に見える部分の材は全て自ら丸太を買って、
製材所で好きなように製材して、
大工さんにお願いして建てたとの事。
その過程を話す姿が生き生きとして輝いていた。
まず、どうなるかわからない丸太を買う・・ 失敗も多かっただろう。
そして製材所に持込み、帯鋸で丸太を挽く。。
これは、鼓動がいつも高鳴り高揚する。
それはあの帯鋸と音と、これから現れる木肌、その木の持つ香り・・・
そして大工さんと相談しながら、自分の思い描く造作を作ってもらう。
一緒に作る。
想像し、図面を書き、それが形となっていく。
丸太購入、製材、建てると3つの楽しみがあると話されていた。
まさにこれが最高の普請道楽といえるのかと思う。
随所に当時の大工さんではやらない、使わない材など使われていて、
材好きな私の目を十分に楽しませていただいた。
外壁は「カポール」を使ったと言っていた、30年40年経過しても
何も傷んでいないのが凄いなぁ・・と。
カポールって昔、敷居材にあったよなぁ・・南洋材だったかなぁ・・
こちらは本実で築30年経過らしい
こっちはそれ以前に建てたもので、やはりカポールを使い、
相ジャクリ加工だったので正面釘打ちがされてある。
築40? 50年?だったと言っていた。
西面なのに、未だこの状態をキープ、これだと100年以上は行けそうです。
欅の厚盤を保管
近所には大きな欅の木が2本、周辺の景観を作っている。
伐られずにずっとこのままであって欲しい・・・
お邪魔しますと玄関に入るや、
ん?これ神代? 茶神代欅ですねぇ・・・と
式台と廊下板一部には広めの一枚板(吸付き桟)が使われていた。
中廊下は欅
節が抜けた部分は埋木での補修が施されている。
欅の板を削り、抜け節を補修し、板が反らないように吸付き桟を入れる、、
どれだけ手間がかかったんでしょうね。。。
階段も当然無垢、
栓?  塩地だそうです。目が積んでいる良い材です。
何より良かったのは、一部栗の廊下板
杢目も良いし、経年変化で色が濃くなっているのも味わいがある。
キッチンと脱衣場の板はナラ材との事。
この木目と使い込まれた感にずっと栗の廊下板を眺めていた。
奥の間の勾配天井の吹き寄せの竿縁は神代桂
なんだか材をどう使おうかと楽しんでいるなぁ・・・って
座敷天井 杉
建具の腰板は杉
良材ではないが、根っこ付近の動きのある木目は面白い。
杉は時々このように銀色に輝く木目が出てくることがある。
ここの離れを作った大工さんに会ったので、神代欅沢山使われていましたねぇと話を聞いたら
あれ、濃い緑で真っ黒でねぇ・・と言われていたが・・・
目にした神代欅は茶神代みたいな色だったので、
神代木ってもしかして何十年と経つと色が少しづつ戻っていくのかなぁ・・・と疑問が湧いてきた。
和室にはこのような渋めの茶神代がとても落ち着いた室内になるかと思う。
地袋天板も神代欅
材を楽しみながら作ったことが随所に感じられる造作でした。
まさに普請道楽、建築途中はいつもワクワクして眠れなかったことでしょうね。

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