■ MUKU-DATA 簀戸(すど)
簀戸といえば、子供の時の夏の午後、実家の畳間に寝っ転がって
昼寝していた事を思い出す。
初夏に板戸から簀戸に入替えられた薄暗い部屋を風が通り抜けていく。
簀戸の向こうには新緑の葉がサラサラと揺れて・・・
あの頃は、まだエアコンなんて使っていなかった時代で
夜は蚊帳を吊って・・ 何だか楽しかったなぁ・・
自然な涼風が心地よかった。
今は使っていない親戚の診療所を解体する事になって、
そこで保管されていた簀戸や板戸を廃棄するのは勿体ないので
何かに使ってくれないか?と言われて、、
特に当てもないのだけど、私自身も同じくこういったものが
バキバキと壊されて焼却処分されるのはいたたまれない気持ちになってくるし
そこはその前の時代は材木屋をやっていたらしく、、
やはり木を大事にして木で作られてものを捨てずに大切に保管されてきたんだなぁ・・と思うと、
増々こうした職人さんが手作りしたもの、まだ使えるものを
簡単に廃棄処分できない気持ちになってくる。
今どきの住宅で簀戸なんて頼まれる事はないんだけど
こうして引き受けてきた扉を眺めていると
意外といいんじゃないかなぁ・・機能を兼ねてどこか使えるような場所はないだろうか・・と使える場所を考えたりしてしまう。
全て自然素材、杉柾の框は秋田杉だろうか・・?新潟産の杉だったのか?
上と中間に竹を使い、簀戸は葦(よし)
そして下段の一枚板の腰板は神代杉ではなかろうか?
少し穴の開いた蓮の板を使っている。
色んな自然素材を使いながら、違和感なく上品にまとめて作ってあって
建具屋さんのセンスを感じる。職人さんって凄いなぁって思う。
当時材木屋だった施主と簀戸を作るにあたってあれこれと毎晩お酒を飲みながら
何の材料でどう作ろうかとアドレナリン出まくっていたのかもしれないねぇ。。
家づくりって本来、そういったアイディアを出しあい楽しみながらやっていたんだろうなぁ・・普請道楽って言葉があるように
うちはこういうのが好みかな・・
あそこの住宅の簀戸って知ってる?あれって何の材料使っているんだろう?とか
今の時代、なかなか皆さん時間に追われている事が多いので
既製品や画一的な材料になってしまうのは分からない訳ではないけれど
少しだけでもいいから、何かそういった事を取り入れたいよね。。
一枚板の板戸も良いものだと思う。
昭和の初めころ?大正の頃?一枚板のいわゆる床天ってあったのかなぁ・・
同じ材木屋でもうちとは違って流石の材木屋さんだったのかもしれない
4畳半のお風呂に使っていた舟底天井も残っていたけど
良い造作だったから、やっぱりそれなりだったんだろうなぁと想像できる。
引き受けてきたこれらの扉を何かに使ってあげたいと思う。
木や木で作られたものって使ってあげてなんぼだもんね、
使う事で更に輝きだしてくるし。。
日本の良いものは受け継いで次へ繋げていかなきゃだな。。